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株式や不動産投資を行う際に「期待収益率」という用語が出てくることがあります。
この「期待収益率」は投資先を判断するための重要な基準となる数値のひとつですが、投資初心者の中には、いまいちピンとこない人も多いのではないでしょうか。
本記事では、はじめて株式・不動産投資を行う人でも理解できるよう、期待収益率の概要と投資の収益の種類・計算方法について噛み砕いて説明していきます。
期待収益率とは
期待収益率とは「投資家が対象の資産を運用することで将来獲得できる収益(リターン)の平均値」のことです。「要求収益率」や「期待リターン」とも呼ばれています。
端的に説明すると「投資する資金に対してどれくらいの収益が見込めるかを示した数値」です。
期待収益率がマイナスの場合は投資をしても損をしますが、プラスになるようであれば、投資による収益獲得が期待できると言えます。
ただし、期待収益率は、リスクが高い投資ほど高くなります。資産運用においては、安全かつ高い期待収益率を期待することはできません。
やるには高い期待収益率が見込まれる資産運用がよいのですが…。
高い収益率を「元本額に対する収益額の割合」という意味で考えると資産運用になるかは難しいですが「宝くじ」などのギャンブルが上位に来るかもしれません。
たしかに、資産運用とは違いますね。
次に「先物」や「FX」などが続き、その下に「株式」「投資信託」「債券」「外貨預金」や「不動産投資」などがあります。その下に「定期預金」「普通預金」が続きます。
預金や国債等は最初から収益率が決まっているため、投資の中では比較的安全ですが、高い期待収益率を望むことはできません。
一方、株式や外貨への投資は値動きがあるので将来の収益率が不確実な分、期待収益率も高まる傾向にあるのです。
そのため投資家は、値動きがある将来の収益性をリスクの程度を踏まえ期待収益率を求めます。
高い収益率を取るとギャンブル性が高くなると…。ではリスクを抑えつつもある程度の収益率が期待できるものはなんでしょうか?
いついくら必要かという目的にもよりますが、10年以上先(20年や30年も)に使うお金として考えるとミドルリスク・ミドルリターンの「株式」「投資信託」「債券」あたりが物価上昇リスクにも有効です。
もちろん昨今話題の「NISA]「iDeco」もその中に含まれます。
大切なのは収益率より何のためにいつまでにいくら用意する必要があるのかを考えて、それに見合った商品を選んで運用することだと思います。
投資での収益の種類
投資において、収益は次の2種類があります。
- インカムゲイン
- キャピタルゲイン
インカムゲイン
インカムゲインとは、投資した資産そのものが生み出す「投資の果実」となる収益のことを指します。預金の利息のように、放っておいても増えていくのが「インカムゲイン」です。
インカムゲインの種類には、次のようなものがあります。
- 銀行預金による金利
- 債券の利息
- 株式の配当金・株主優待
- 投資信託による収益分配金
- 不動産の家賃収入
インカムゲインの王道「不動産投資」
不動産投資は、まさにインカムゲインという感じでしょうか。誰もが想像しやすい投資方法だと思います。
不動産投資としてワンルームマンションを購入することがここ10年ほどで需要が広がっているようです。
特に住宅ローンが組みやすく税金などに対する効果もあることからドクターや公務員の方々はもとよりOLさんにも広がっているようですね。
どのようなメリットに魅力があるのでしょうか?
借主さんの家賃でローン返済でき、返済が済んでしまえばプラスメリットが大きいようです。
私の知り合いにも何部屋も、あるいは何棟も保有する方がいますし、不動産投資会社の社長さんも何人か存じています。メリデメを知って自分に見合った運用であればよい方法の一つだと思います。
不動産投資の期待収益率の相場は?
不動産投資の期待収益率の相場はどれくらいですか?
期待収益率の相場ですが、物件やエリア、空室率、ローンの組み方などによって様々ですね。
購入時の説明では4%と言われても様々な諸経費を含めると2%程度になるなんてこともあるようです。
またその部屋単体ではマイナスになっても何件かの組み合わせでプラスになるようにするという考え方もあります。
収益率の相場を知ることも大事だと思いますが、ご自身の将来に対する考え方をもとにそれに見合って気に入った物件を手に入れると毎月のローンの返済も楽しくなるかもしれません。
キャピタルゲイン
もう一つの投資の収益として、キャピタルゲインというものがあります。キャピタルゲインとは、投資した資産そのものを売却して得ることができる収益、つまり値上がり益のことです。
キャピタルゲインの最大の特徴は、その資産を売却した収益を得ることができるのは、1回のみであることです。
株式や不動産等の資産には値動きがありますので、売却しても損失の方が大きくなる可能性があります。
つまり、その資産の投資時(購入時)よりも値段が下がっている時点で売却すれば損。これはキャピタルロスという投資におけるリスクとなります。
期待収益率の計算方法
株式投資における期待収益率の計算方法をご説明します。
ヒストリカルデータ方式
期待収益率を求めるうえで最も簡単な計算式が、過去のリターンを基に期待収益率を求める「ヒストリカルデータ方式」と呼ばれる計算式。
字義通り、過去の平均リターン値などで資産の期待収益率を求めます。もちろん将来は過去の通りになることはありませんが、過去にある長期的なデータを基に、将来の見通しを立てるという考えです。
個別資産の期待収益率の計算方法
期待収益率=Σ{(実現しそうな収益率)×(各状況の収益率)}
個別資産の期待収益率は上記式によって求めることができます。イメージがしやすいように、もう少し具体的な事例を挙げて説明します。
例えば、ある株式は景気変動によって次のように収益率が変動するとします。
景気状況 | 確率 | 収益率 |
---|---|---|
好景気 | 30% | 25% |
現状維持 | 50% | 15% |
不景気 | 20% | 1% |
上記のデータをもとに、この株式の期待収益率を計算すると、次のとおりです。
期待収益率 =25%×0.3+15%×0.5+1%×0.2=15%
つまり、この場合には株式の期待収益率は15%です。
ポートフォリオの期待収益率の計算方法
ポートフォリオ理論は、分散投資のメリットを数値にして説明するものです。
分散投資という単語はよく出てきますね。
分散投資、時間分散、長期運用は投資の基本です。一つがコケたらすっからかんにならないように、リスクを分散しましょう。
もちろん必要に応じて配分割合を見直すことも必要だと思います。
ポートフォリオの期待収益率は、次の2種類の方法で求めることができます。
各資産の期待収益率の加重平均
例えば、期待収益率25%の株式Aと、期待収益率15%の株式Bを、7:3の割合で投資する時、ポートフォリオの期待収益率は次のように求めます。
期待収益率 =25%×0.7+15%×0.3 =22%
しかし、この計算方法で求めた期待収益率を用いると、分散や標準偏差の数値に誤りが発生します。リスクまで計算するなら、次の計算方法をご利用ください。
各状況のポートフォリオの期待収益率の加重平均
例えば、円高になる確率が30%、不変の確率は50%、円安になる確率が20%となる株式の為替相場があります。
この為替相場で、株式Aの収益率は円高で25%、不変で5%、円安で1%とします。また、株式Bの収益率は円高で1%、不変で15%、円安で25%とします。
為替相場 | 確率 | A 収益率 | B 収益率 |
---|---|---|---|
円高 | 0.3 | 25% | 1% |
不変 | 0.5 | 5% | 15% |
円安 | 0.2 | 1% | 25% |
株式Aに70%、株式Bに30%の資産を投資する場合、円高・不変・円安の各状況のポートフォリオの収益率は次のとおりになります。
円高:25%×0.7+1%×0.3=17.8%
不変:5%×0.7+15%×0.3=8%
円安:1%×0.7+25%×0.3=8.2%
次に、各状況の発生確率の加重平均により、ポートフォリオの期待収益率を求めることができます。
期待収益率 =17.8%×0.3+8%×0.5+8.2%×0.2 =10.98%
今回は異なる数値を用いて計算をしましたが、同一のデータであればどの計算式で求めても、同じ期待収益が算出されます。
このような具合に期待収益率はあらゆる場面で役立つものです。必ず身に着けた上で投資、M&Aを行いましょう。