人生100年時代と言われるように長寿時代を迎えています。
長生きできるのは素晴らしいことですが、一方で長寿時代を楽しく生きていくにはお金が必要になります。
国民年金と厚生年金は、一生涯受給できる非常に望ましい制度ですが、世帯により年金受給額が変わるので、年金だけでは不足する世帯が多いと言われています。
2019年(令和元年)5月22日、金融庁は「高齢社会における資産形成・管理」報告書(案)を公開しました。
この中で、夫が厚生年金、妻が国民年金の平均世帯(年金モデル世帯)で95歳まで生きていくと65歳から受給する年金以外に約2,000万円不足するので現役世代のうちから資産形成を行うように指摘し、現役世代に効果的な方法として、以下を紹介しています。
- つみたてNISA(少額投資非課税制度)
- iDeCo(個人型確定拠出年金)
つみたてNISA・iDeCoは、現役世代が人生100年時代の資金作りに効果的な制度です。
生活費と資産の状況
総務省「2017年家計調査」によると2人世帯以上の消費支出と貯蓄は、以下のようになっています。
世代 | 毎月の支出 | 貯蓄高 | 負債額 | 差額 |
---|---|---|---|---|
20代 | 23.1万円 | 361万円 | 468万円 | -107万円 |
30代 | 26.0万円 | 600万円 | 1,056万円 | -456万円 |
40代 | 31.5万円 | 924万円 | 961万円 | -37万円 |
50代 | 34.3万円 | 1,596万円 | 607万円 | 989万円 |
60代 | 29.0万円 | 2,129万円 | 267万円 | 1,862万円 |
70歳以降 | 23.4万円 | 2,056万円 | 115万円 | 1,944万円 |
国民年金受給額は、40年満期で月額約6万5千円になります。
平均の月額受給額は、厚生労働省の資料によると以下のようになっています。
- 〇国民年金単身者
- 5万5千円
- 〇国民年金夫婦2人
- 11万1千円
- 〇厚生年金男性
- 16万6千円
- 〇厚生年金女性
- 10万3千円
- 〇夫(厚生年金)と妻(国民年金)
- 22万2千円
- 〇厚生年金夫婦共働き
- 26万9千円
高齢世帯の収入と支出
年金受給モデル高齢無職世帯の収入と支出は、高齢社会における資産形成・管理」報告書によると以下のようになっています。
実収入
- 〇給与・事業収入
- 8,277円
- 〇年金収入
- 191,880円
- 〇その他収入
- 9,041円
- 〇実収入
- 209,198円
実支出
- 〇住居費
- 13,658円
- 〇食費
- 64,444円
- 〇水道光熱費
- 19,267円
- 〇保険医療費
- 15,512円
- 〇税金・社会保障費
- 28,240円
- 〇交通通信費
- 27,576円
- 〇家具・家電費
- 9,405円
- 〇被服・履物費
- 6,497円
- 〇税金・社会保障費
- 28,240円
- 〇教養娯楽費
- 25,077円
- 〇その他消費支出
- 54,043円
- 〇実支出
- 263,718円
上記結果から、収入から支出を差し引くと、54,520円の赤字になります。
高齢世帯なので収入を増やすことは困難で、この赤字は貯蓄から引き出し埋めることになります。
もし、夫婦ともに95歳まで生きると赤字額の合計は、ほぼ2,000万円になり、65歳ごろまでに2,000万円の資産形成が必要になると言っています。
この赤字額は、年金モデル世帯の例です。
世帯により、実際の収入・支出は変わりますので、各世帯の金額を当てはめて計算してみてください。
高齢時代に向けた資産形成
日本の多くは、預金(金融機関)・貯金(ゆうちょ銀行・農協などタンス預金等も含む)で資産形成をしてきました。
1995年(平成7年)頃までは、これで問題ありませんでした。
その当時は金利が高く利用者の多い郵便局の「定額貯金」は、一定額を最大10年間預けておけます。
- 預ける金額は1,000円から最大300万円
- 6ヶ月後以降は払い戻し自由
- 3年までは6ヶ月ごとに金利が変動(増える)
- 10年間、半年複利
定額預金は、10年預けると以下のようになります。
日付 | 平均利回り | 10年後税引後の総額 |
---|---|---|
平成1年6月19日 | 5.154% | 1,412,285円 |
平成4年1月20日 | 6.386% | 1,510,893円 |
平成7年1月9日 | 3.602% | 1,288,149円 |
平成10年3月9日 | 0.408% | 1,031,615円 |
平成12年3月21日 | 0.202% | 1,016,153円 |
平成初期は、今では想像できない高金利時代です。
令和元年では、銀行の定期預金は0.01%まで下がり、預貯金での資産形成は困難になっています。
預貯金で増やすことが難しいことから、資産形成に期待されるのが株式や不動産・債券などへの投資になりますが、現役世代個人で行うのは困難かつ、リスクも高くなります。
そこで、現役世代向けの以下の公的制度があります。
つみたてNISA(少額投資非課税制度)
つみたてNISAは、少額からできる投資を長期間支援する非課税制度で、2018年1月から始まりました。
投資の対象商品は、以下に示す特徴を持った公募株式投資信託と上場株式投資信託です。
- 手数料が低水準
- 元本を減らす分配金を頻繁に行わない
- 長期・積立・分散投資
- いつでも解約・現金化が可能
つみたてNISAは、非課税期間が長いこと、投資額の上限が比較的低めということから、少額でコツコツと長期的な投資信託がしたい方にオススメします。
iDeCo(個人型確定拠出年金)
iDeCoは、高齢時代に向けた長期間の資産形成を行う個人型確定拠出年金です。
確定拠出年金は、掛金が一定で年金額が変わる年金制度です(掛金は変えることができます)
国民年金や厚生年金は、年金額が確定(年により調整)しているので、確定給付年金と言われます。
iDeCoは、以下の特徴を持つ年金です。
- 自分で設定した掛金を積立
- 自分で選んだ定期預金・保険商品・投資信託商品で運用
- 60歳以降に年金受け取り
iDeCoは、自分で有利な商品を選ばないと資産形成に役立ちません。
また、年金制度なので基本的に60歳未満で解約・現金化はできません。
- つみたてNISA・iDeCoは、現役世代が人生100年時代の資金作りに効果的な制度
- 高齢世帯の収入と支出は赤字
- 高齢時代に向けた資産形成が重要
- 預貯金での資産形成は困難
- つみたてNISA/iDeCoは現役世代向けの以下の公的制度
投資する商品の選択は吟味しましょう!長期分散積立投資のことを知ってもらってからスタートされるのが良いと思います。
それぞれ何歳くらいから始めるべきなのでしょうか。
NISAは何歳からでも良いと思います。iDecoとつみたてNISAは出来れば20代から始められたら良いと思います。
それぞれ始めるにあたって、どのくらいの資金を準備しておけばいいでしょうか。
つみたてNISAとiDecoは“毎月コツコツ“がポイントです。なのでご自身の収支のバランスも考えて無理のない、長く続けられる金額はいくらなのか?を考えて準備をしてみてください。
次回はつみたてNISAとiDeCoの違いについてお話しします。
▶ つみたてNISAとiDeCoの違い|それぞれの特徴を解説
まとめ
- 〇つみたてNISA・iDeCoは、現役世代が人生100年時代の資金作りに効果的な制度
- 〇夫婦ともに95歳まで生きると赤字額の合計は、ほぼ2,000万円
- 〇預貯金での資産形成は困難
- 〇つみたてNISAは、少額からできる投資を長期間支援する非課税制度
- 〇iDeCoは、高齢時代に向けた長期間の資産形成を行う個人型確定拠出年金