確定給付年金なのになぜ制度改正が必要なのか

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年金制度とは、あらかじめ受け取る年金が決まっている確定給付年金です。

5年に一度制度の改正がされますが、なぜ受給する年金額が決まっているのに改正する必要があるのかと思われる方もいらっしゃると思います。

それには、将来の経済変動などによりインフレがおき貨幣価値が下がることで、老後資金の不足に繋がるとが考えられているからです。

平成時代、日本では物価上昇はわずかでしたが、世界では物価上昇が大きい国がほとんどです。

今までの年金制度は、物価が上昇した場合に年金が増える物価スライドが導入されています。これからは、少子高齢社会の到来により、年金制度を維持する仕組みとして年金の上昇を抑えるマクロ経済スライドや現役世代の賃金に合わせて調整する賃金スライドが導入されています。

年金の種類

一般に現役時代に年金掛金を納付、あるいは積立てをします。高齢になった時に年金として受け取る年金制度には、以下に示す種類があります。

  • 国民年金や厚生年金の「公的年金」
  • 法律で決まっている「企業年金・個人年金等」
  • 保険会社で募集する「個人年金保険」

公的年金と企業年金・個人年金等には、払込保険料と将来受け取る年金額に、以下に示す種類があります。

  • 確定「給付」年金
  • 確定「拠出」年金

また、個人年金保険は一般に保険料が確定していて、年金が確定しているタイプと保険会社の保険料の運用により増減するタイプがあります。

確定給付年金

公的年金と企業年金の一部の確定給付年金はあらかじめ給付が定められ、その給付をまかなうために必要な掛金を納付していく方式です。

受け取る年金額の確定は、その金額でなく価値であることが特徴です。

年金額が確定している個人年金保険は、年金の価値でなく金額が確定しています。価値と金額の確定はデフレ時には同様で年金の減額はないですが、インフレ時には受け取る年金が増加するなどはします。

確定拠出年金

確定拠出年金は掛金を事前に定め、その掛金の運用実績によって年金が決まる方式です。

企業年金・個人年金等は、確定給付型もありますが、一般に確定拠出年金が基本です。

通常、個人年金保険は保険会社が運用しますが、確定拠出年金は加入者が金融商品の選択をし運用します。そのため、金融商品の選択により減額になる場合があります

ですので、加入しても運用しないでほっておくと年金が増えません。減額になることは一般的にないですが、預金と同じで利率は非常に低くなります。

年金価値の確定

年金額が確定していても、その使用時には価値が変わります。

  • デフレ時には物価が下がるので同じ金額でも多くのものが手に入る…価値が上がる
  • インフレ時には物価ががるので同じ金額だと買えるものが減る…価値が下がる

公的年金(確定給付年金)には、物価スライド制が導入されていて、インフレ時でも購入できる量が同じになるように年金支給額を調整する仕組みがあります。

しかし、デフレ時には物価スライド制が適用されていません。
基本的に年金は増えても減ることがないので、受給者にとっては非常に有利な制度です。

制度改正の必要性「少子高齢社会」

公的年金制度は、基本的に「世代間の支え合い」で運用されていて、働いている「現役世代」が支払った保険料を「高齢世代」の年金給付に充てる仕組みになっています。

現役世代の人口が多い時代には、多くに人が高齢者を支えるので年金制度は余裕がありましたが、その後以下の様に、日本は高齢世代が多くなる時代を迎えました。

  • 1970年(昭和45年):65歳以上の割合が7%を超える「高齢化社会」
  • 1994年(平成6年):14%を超える「高齢社会」
  • 2017年(平成30年):27%を超える「超高齢社会」

高齢者1人を支える人数は、内閣府高齢社会白書(平成29年推計)によると、以下に示すように減少しています。

高齢者1人を支える人数65歳以上の比率
1960年11.2人5.7%
1970年9.8人7.1%
1980年7.4人9.1%
1990年5.8人12.1%
2000年3.9人17.4%
2010年2.8人23.0%
2017年2.2人27.7%
2025年1.9人30.0%
2035年1.7人32.8%

上記の通り、高齢者1人を支える人数は減っていきますが、その減少率は緩やかになっていきます。

「世代間の支え合い」という観点から、働いている「現役世代」が減ると制度の維持に問題が出てきます。

制度改正の必要性「高度成長の望めない経済情勢」

現役世代が減少しても経済成長により現役世代の給与が増加していれば、掛金も増額可能で年金制度の維持に効果的です。

しかし、以下に示すように現役世代の給与水準が停滞しています。
※厚生労働省平成28年賃金構造基本統計調査

男女計賃金前年比増減率
平成9年(1997年)298.9千円1.1%
平成10年(1998年)299.1千円0.1%
平成15年(2003年)302.1千円-0.2%
平成20年(2008年)299.1千円-0.7%
平成25年(2013年)295.7千円-0.7%
平成28年(2016年)304.0千円0.0%

日本の給与水準は、平成元年ごろ(1990年ごろ)をピークにその後減少し、平成10年ごろから平成28年にかけて停滞しています。

このため、「現役世代」の支払う保険料が増えないことから制度の維持に問題が出てきます。

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