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年末になると必要になる「年末調整」は、納税のために必要な作業です。そうだと分かっていても、具体的な制度の中身や目的を正確に把握している人は少ないのではないでしょうか。
この記事では、納税のために必要な「年末調整」について、詳しく解説します。
年末調整とは
年末調整とは、企業側が毎月の給料から天引きした所得税の合計と、1年間に納税するべき正確な所得税を比較し、過不足金額を調整する作業のことです。
年末調整の必要性
納税は国民の義務であり、企業や会社から支払われた給料に対しても税金が発生します。会社員であれば「源泉徴収」という形で、給料から一定額の所得税が天引きされています。
所得税とは支給された給料自体に発生する税金であり、企業側が毎月の給料から差し引いています。しかし、日本の税制は累進課税方式であり、給料を基準に課税額が決定していることから、会社員が昇給や転職、家族構成の変化などにより給料額が変動した場合、徴収額の過不足を調整する作業が発生するのです。
手続きの時期や方法
年末調整には特定の書類が必要であり、配布された申告書に必要事項を記入し企業側に提出することが求められます。
◆ 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
扶養控除などの諸控除を受けるために必要な書類です。
◆ 給与所得者の配偶者控除等申告書
給与所得者に配偶者がいる場合、配偶者の所得に応じて配偶者控除や配偶者特別控除を受けるために必要な書類です。
◆ 給与所得者の保険料控除申告書
生命保険料や地震保険料などの各種保険料の支払い事実がある場合、各種保険料控除を受けるために必要な書類です。
年末調整関係の書類は、1月31日までに税務署に提出しなければなりません。
個別の社員や従業員に関連書類が配布される時期は統一されていませんが、一般的には月末が給料日である企業が多く、年内に支払う給与のすべてが確定する11月末頃には申告書の配布が始まるでしょう。
年末調整と確定申告の違い
年末調整と混同されがちな納税制度に「確定申告」が存在します。
確定申告とは
確定申告とは、1年間の所得をまとめて税金を計算し、納めるべき税額を税務署に報告および納税する手続きのことです。
会社員として企業側が年末調整を行っている方については、一部の例外を除き原則として確定申告は必要なく、企業に属さない個人事業主やフリーランスとして働く方にとって必要な手続きです。
申請内容の差異
年末調整と確定申告では、申告できる内容に違いがあります。
- 年末調整…給与所得に関する税額を計算し正確な税額を調整
- 確定申告…給与所得以外の、全ての所得(事業所得や不動産所得など合計10種類に及ぶ)に関する税額をまとめて申請
一見すると似ている年末調整と確定申告ですが、対象者や対象所得に大きな違いがあるのです。
年末調整の対象になるケース
勤務している会社に「給与所得者の扶養控除等(異動)申請書」を提出している方は年末調整が必要になります。年末調整には12月に行う年末調整と、年の途中で行う年末調整の2種類が存在します。
【12月に行う年末調整対象者】
- 一年を通じて勤務している者
- 年の途中で就職し年末まで働いている者
【年の途中で行う年末調整の対象者】
- 海外支店等の転勤によって非居住者となった者
- 死亡によって退職した者
- 著しい心身障害のために退職した者で、再就職によって給与を受け取る見込みのない者
- 12月に支給される給与等の支払いを受けて退職した者
- パートタイマーなどの退職者で、本年中の給与総額が103万円以下である者
年末調整の対象にならないケース
会社に「給与所得者の扶養控除等(異動)申請書」を提出していても、例外的に年末調整が必要ない場合があります。
【年末調整の対象にならない者】
- 1年間の給与総額が2,000万円を超える人
- 災害免除法の規定により、その年の給与に対する所得税及び復興特別所得税の源泉徴収について徴収猶予や還付を受けた者
- 個人事業主やフリーランス、日雇い労働者等
- 退職者
年末調整の対象にならない方は、自分で確定申告を行う必要があります。
まとめ
この記事では年末調整について解説してきました。確定申告と混同してしまいがちな年末調整ですが、一部の例外を除き、会社員は年末調整、個人事業主は確定申告と覚えておいてください。
年末調整は、会社員であれば毎年必ず必要になる手続きです。円滑に作業を進めるためにも、基本的な知識は正確に身につけておきましょう。