犬の手術費用はどれくらい?相場や知っておきたい治療費事情!
2023年10月3日
この記事では
・犬に多い通院と治療費
・実際の手術費用例
「犬に多い手術理由」は
ペット保険会社「アイペット」が発表した《保険金の多い傷病ランキング(手術)》によると、1位「腫瘍」・2位「歯周病」・3位「骨折」・4位「異物誤飲」・5位「膝蓋骨脱臼」となっています。
骨折や異物誤飲は子犬に多くみられ、腫瘍や歯周病はシニア犬に多い傾向があります。
犬はどのような理由で手術するケースが多い?診療費用は?
犬などペットの病気や治療費に関する統一した統計はありません。各ペット保険会社が保険金請求をもとに原因や治療費を導き出したものがほとんです。
大手ペット保険会社のデータによる手術理由と治療費を件数の多い順に並べると以下のようになります。
病名 | 中央値(円) | 平均値(円) | |
1 | 歯周病/歯肉炎 | 50,450 | 61,547 |
2 | その他の皮膚腫瘍 | 69,660 | 84,586 |
3 | 消化管内異物/誤飲 | 105,009 | 128,024 |
4 | 乳腺腫瘍/乳腺腫瘤 | 102,249 | 119,208 |
5 | 膝蓋骨(亜)脱臼 | 196,776 | 220,711 |
6 | 子宮蓄膿症 | 138,456 | 155,240 |
7 | 全身の腫瘍 | 90,974 | 117,702 |
8 | 外傷(挫傷/擦過傷/打撲) | 113,735 | 187,078 |
9 | 歯根膿瘍/根尖膿瘍 | 54,011 | 66,588 |
10 | 骨折(前肢) | 168,696 | 190,655 |
引用:アニコムどうぶつ白書2019 犬の手術TOP10 (1回あたりの診療費)
- 平均値と中央値
- 平均値とは、データの合計をデータの個数で割って得られる値 。中央値とは、データを大きさの順に並べ替えたとき、ちょうど順番が真ん中になる値です。
子犬期・シニア期に多く見らる手術は?
動物病院における治療費は自由診療のため、各動物病院や犬の状態によってばらつきがあります。費用に関しては一つの参考程度に見てください。
以下代表的な手術と手術料金の相場を紹介します(術前の検査・手術・麻酔・入院費を含む)。
子犬は要注意
・異物誤飲 : 1歳未満の子犬で圧倒的に多い
・骨折 : 骨格の発達が未熟なため骨折しやすい
異物誤飲にかかる治療費
・開腹手術 15~20万円
・催吐処置 8,000円前後
・創外固定 10万円~
・プレート固定 15万円~
シニア犬に多いのは
・椎間板ヘルニア
・腫瘍(皮膚腫瘍 乳腺腫瘍 口腔の腫瘍 肛門周囲腺腫 悪性リンパ腫等)
・子宮蓄膿症(未避妊 出産経験のないシニア犬)
手術費用
・腫瘍 口腔内腫瘍 10万円 乳腺腫瘍 15~20万円
・子宮蓄膿症 13~20万円
・歯周病 別記
乳腺腫瘍・子宮蓄膿症は早期の避妊手術で防げる
避妊手術費用・去勢手術
・小型犬 4~6万円
・中型犬 5~7万円
・大型犬 6~8万円去勢手術
・小型犬 2万円~
・大型犬 3万円~※インコウ(陰睾)がある場合去勢手術時にセットで治療してもらえるケースもあります。位置によって手術方法が異なりますが去勢費用に5,000~1万円追加した料金が一般的。腹腔内にある場合小型犬であれば5万円程度が目安。
代表的な手術とその費用(科目別)
以下、比較的手術件数の多い疾患の例を挙げてみます(検査・手術・入院費含む)。
【眼科疾患】
・緑内障 片側 15万円
・マイボーム腺炎(線種) 5~15万円
・イボ(凍結療法) 1回1万円程度×数回
【消化器疾患】
・腸管内異物誤飲 開腹手術 15~20万円
・胃捻転 20万円程度
・腸閉塞 15~20万円
※腸閉塞の原因は主に機械的閉塞と言われるもので腸管内が物理的に塞がれてしまい通過障害が起こす腸閉塞です。具体的には、誤飲した異物、腫瘍・ポリープ、重度の便秘、腸捻転、腸重積、腸ヘルニア、会陰ヘルニア、手術後の癒着などが挙げられます。
【泌尿器】
【整形外科】
・大腿骨頭壊死症 20~30万円
・膝蓋骨脱臼 25~30万円
・椎間板ヘルニア(別記)
・骨折(別記)
犬はどのような理由で通院するケースが多い?治療費用は?
以下、通院件数の多いものと、それぞれの年間治療費を紹介します。
順位 | 傷病名 | 件数 | 1頭あたりの 年間診療回数 | 1頭あたりの 年間平均診療費(円) |
---|---|---|---|---|
1 | 原因未定の外耳炎 | 168,192 | 2.9 | 39,782 |
2 | 弁膜症 | 151,842 | 8.3 | 225,810 |
3 | 嘔吐/下痢/血便(原因未定) | 147,801 | 2.8 | 36,198 |
4 | 胃炎/胃腸炎/腸炎 | 117,823 | 1.7 | 38,920 |
5 | 原因未定の皮膚炎 | 113,842 | 3.1 | 49,689 |
6 | 膿皮症/細菌性皮膚炎 | 102,150 | 3.2 | 51,986 |
7 | 慢性腎臓病(腎不全含む) | 90,753 | 13.1 | 243,339 |
8 | アレルギー性皮膚炎(抗原特異的) | 81,058 | 4.7 | 96,850 |
9 | アトピー性皮膚炎 | 54,618 | 5.6 | 123,723 |
10 | てんかん | 54,505 | 6.9 | 154,723 |
通院件数の多い皮膚疾患・外耳炎・消化器症状などでは軽症の内に早期受診すれば治療費も少なく、受診回数も一回で終了することもありますが、対処が遅れると治りにくくなり、通院回数も多くなります。
通院治療では症状に幅があるため、費用をまとめることは難しいですが一例を紹介します(軽症の場合)、
例えば皮膚トラブルで動物病院を受診した場合
・皮膚検査 1650円
・皮下注射 2530円
・内服薬 5日分 1650円・合計 6600円
嘔吐・下痢などで受診した場合
・皮下注射 2530円
・内服薬5日分 1650円
・合計 4950円
・処置 800円
・処方 1700円
・合計 3600円
犬が乳腺腫瘍になった場合の手術費用
犬の死因の1位は腫瘍(癌)ですが、犬の腫瘍の中でも皮膚腫瘍に次いで2番目に多いとされる乳腺腫瘍の治療費例です。犬の乳腺腫瘍は半分近くは良性のものですが、いずれも基本は外科治療です。どちらであるかは術後の病理検査の結果で判明します。
ここでは実際に犬が乳腺腫瘍の手術を受けた場合の具体的な治療費の内訳をご紹介します。
乳腺腫瘍の場合、摘出する範囲によって費用は大きく異なってきます。
・片方の乳腺全摘出 15~20万円
・両側乳腺全摘出 25~30万円
治療明細の一例(検査・麻酔・入院・投薬・点滴など含む) | |
内容 | 金額(円) |
診察 | 2,000 |
手術 | 50,000 |
検査費用 | 9,000 |
入院(3日) | 8,000 |
麻酔 | 19,000 |
点滴 | 8,000 |
内服薬 | 2,000 |
合計 | 98,000 |
犬が歯周病になった場合の手術費用
犬の歯周病は最も手術件数の多い疾患です。ペット保険では全身麻酔下で行う処置は「手術」とみなされるため、人の場合簡単にできるスケーリング(歯石取り)などの処置も全身麻酔が必要になり「手術」扱いになっています。
犬の歯周病(乳歯遺存や歯肉炎を含む)の治療費は
・手術費用平均 61,547円
【犬の歯石取りに必要な費用の一例(小型犬・抜歯なし)】
内容 | 料金 |
診察 | 1,100円 |
処置前血液検査 | 9,350円 |
レントゲン2枚 | 5,500円 |
血管確保 | 3,300円 |
静脈点滴処置 | 2,200円 |
静脈点滴薬価 | 1,100円 |
麻酔前投与薬 | 4,400円 |
吸入麻酔 | 16,500円 |
歯石スケーリング | 7,700円 |
歯石処置後の研磨 | 3,300円 |
合計 | 5,4450円 |
抜歯や破折(歯が折れた状態)治療が必要なケースではさらに高額になることが予想されます。また高度な設備の整った動物病院での処置は高額になる傾向にあります。
何らかの検査や手術、処置のために全身麻酔を使用する機会があったら、スケーリングをお願いするのも一つの方法です。また必要性があれば抜歯をしてもらうことも可能なケースもあります。
犬が椎間板ヘルニアになった場合の手術費用
ダックスやコーギーなどに代表される椎間板ヘルニアも症例の多い手術で、手術費用は20~30万円が相場です。椎間板ヘルニアは腰だけでなく頚椎でも発症しますが、手術方法に変わりはありません。
入院費 | 38,000円 |
手術費用 | 150,000円 |
全身麻酔 | 15,000円 |
静脈点滴 | 5,000円 |
静脈注射 | 5,000円 |
鎮痛剤 | 5,000円 |
MRI検査 | 125,000円 |
CT検査 | 40,000円 |
レントゲン検査 | 4,500円 |
合計 | 387,500円 |
ヘルニアは初期であれば内科的治療を選択することもあります。方法としては安静(4~6週間のケージレスト)が必要で、主に家庭で安静な生活を保ちます、痛みに対しては鎮痛剤を使用したり、レーザー治療(1回1500円程度)を併用しますが治療費はさほどかかりません。
手術をした場合の入院期間は約3週間が必要ですが、多くは1週間くらいで退院して残りの期間を家庭で安静(ケージレスト)を保つという例が多いです。
補足 その他のヘルニア
- ヘルニアとは
- 体内の臓器が本来あるべき位置からはみ出したものをいいます。犬で多いのは「鼠経ヘルニア」「臍ヘルニア」「会陰ヘルニア」などがあります。
鼠径ヘルニア:鼠径部に隙間が開いていてその隙間から脂肪・大網・腸の一部などが皮下に飛び出しているもの
手術費用相場(検査・手術・入院費含む) 4~10万円
臍ヘルニア(でべそ):成長過程で閉じるべき臍の穴が閉じずに開いて、そこから脂肪や臓器が飛び足したもの 奇形
手術費用相場 先天性のケースが多く避妊去勢手術を行う場合5,000~1万円プラスで実施できます。
会陰ヘルニア:会陰部(簡単に言うと肛門の周囲)にある筋肉の隙間から脂肪やお腹の中の臓器が飛び出す。
手術費用相場 7~15万円
食道裂孔ヘルニア:腹腔内の臓器が食道裂孔を通じて胸腔内に入り込んでしまう状態
手術費用相場 10~20万円
犬が骨折してしまった場合の手術費用
骨折した場合の治療費は骨折の状態によって異なりますが、相場は13~30万円程度です。
アニコムどうぶつ白書2019によると、骨折は犬の手術理由の10位で治療費は中央値が168,696円、平均値が190,655円となっています。
実際の治療費の例を紹介します。
初診料 | 1,620円 |
入院費(7日) | 68,040円 |
点滴 | 21,060円 |
血液検査 | 12,960円 |
レントゲン | 11,880円 |
注射 | 8,640円 |
麻酔 | 14,040円 |
手術費用 | 129,600円 |
合計 | 267,840円 |
引用:犬との暮らし大百科
よくある質
犬の弁膜症が手術できるそうですが、費用はどれくらいかかるのでしょうか?
椎間板ヘルニアの手術をしない治療法はありますか?
ペット保険は必要?
ペットには公的な保険制度がありません。そのため治療費の自己負担額は100%です。
もしもの時に、お金を気にせずペットの治療に専念できるよう健康なうちにペット保険に加入することをおすすめします。
また、病気になった後では加入を断られる可能性があります。
ペット保険比較表や記事を活用するのがおすすめ!
ペット保険比較アドバイザーでは、ペットに合った保険の選び方やペットの健康に関するお役立ち記事を公開しております。
記事と合わせて比較表も活用することで、ペットと飼い主様に合った保険を選ぶことができます。
また、保険会社のデメリット等も理解できるので、後悔しないペット保険選びができます。
ペット保険への加入を検討されている方はぜひご活用ください。
【犬が手術や通院治療をする原因と治療費】まとめ
今回、ペット保険比較アドバイザーでは
・犬に多い通院と治療費
・実際の手術費用例