猫の慢性腎臓病は余命が短い？末期症状や寿命の伸ばし方とは？
この記事では
・猫の慢性腎不全の治療方法
「腎臓の機能」とは
腎臓の働きは主に3つあります。
①老廃物や毒素を尿として排泄して血液を浄化する
②体内の水分量や電解質の調整
③ホルモンの分泌と調節
腎臓は体内の毒素を尿として排出する臓器として知られていますが、ほかにも生命と健康の維持に重要な働きをしています。
腎臓の働きが悪くなり気づきやすい症状は尿の異常です。ほかにも貧血や倦怠感などが現れますが、猫ではなかなか気づきにくいと考えられます。
猫の腎臓病である慢性腎不全とは？
慢性腎不全とは
です。
腎機能が低下した状態が3か月以上続くと慢性腎不全と診断されます。
慢性腎不全は腎臓の機能の2/3が失われたころに症状が現れるといわれており、飼い主さんが気づいたときにはかなり進行していたというケースが多くみられます。
このように早期発見が難しい病気であることから、15歳以上のシニア猫の約81％が慢性腎臓病を患っているという報告もあります。加えて高齢猫の死因第1位に挙げられるほど、猫にとっては注意しなければいけない疾患です。
急性腎不全と慢性腎不全の症状や原因の違い
猫に多い腎不全には「急性腎不全」と「慢性腎不全」があり、症状や原因はそれぞれ違います。
| 症状（初期） | 原因 | |
|---|---|---|
| 急性腎不全 | 元気や食欲、給水量や排尿量の減少 | 心不全などによる血液の循環異常、感染症、尿の排泄異常 |
| 慢性腎不全 | 給水量、排尿量の増加 | はっきりとした原因は解明されていない |
急性腎不全と慢性腎不全では初期症状が真逆なのが分かります。ただし進行するとどちらも腎不全であることから「激しい嘔吐」と「体温低下」の後、死に至ります。
慢性腎不全は発症原因が不明ですが
・加齢
・歯周病
・膀胱炎
・猫免疫不全ウイルス（FIV）感染症
・甲状腺機能亢進症
などの要因で発症リスクが高まるとの報告もあります。
慢性腎不全で注意が必要な症状
慢性腎不全では注意すべき症状が3つあります。
・嘔吐、食欲不振、体重減少
・高血圧性網膜症
多飲多尿、乏尿欠尿
腎臓病で腎臓が正常な働きができないと体内の老廃物を尿に溶け込ませることができず、正常な尿と比べて色が薄くなります。
また尿の量や回数が増える「多尿」の状態になり体内の水分量は減少、猫の体は脱水状態にならないよう水分を補うため「多飲」となります。
腎臓病が進行すると次第に尿を作る機能が失われてしまい「乏尿」となり、最終的には尿を作ることができなくなった「欠尿」の状態になります。
嘔吐、食欲不振、体重減少
腎臓が正常な働きができなくなり老廃物の蓄積や体液の成分が均等でなくなることで、猫の体には体調不良として現れます。
強い吐き気を感じ、「嘔吐」や「食欲不振」となり、これらの症状に加えて腎不全による栄養吸収不全による「体重減少」を引き起こします。
高血圧性網膜症
慢性腎臓病では腎機能異常によって血圧調整ができなくなり「全身性高血圧」になりやすいことで知られています。
高血圧性網膜症は全身性高血圧に伴う網膜の症状です。
- 高血圧性網膜症とは
- 高血圧による眼の奥の出血などが原因となり網膜がはがれる網膜剥離が起き、視力低下、失明が起きる疾患。
腎疾患の猫の20~65%は高血圧を併発しているといわれており、ある研究では高血圧の猫はすべて高血圧性網膜症を持っているという報告があります。そのうち8割ほどで急性の失明がみられたとされています。
末期症状のひとつである尿毒症
尿毒症とは
のことです。
腎不全になると尿で排出されるはずのアンモニアなどの老廃物が血液中に蓄積していきます。また体液の成分バランスの異常もみられ、吐き気や食欲不振などの症状を引き起こします。
症状が進行していくと尿毒症といわれる末期の状態になります。
尿毒症はこれまでの症状に加え
・鼻をつくような体臭
・貧血
・痙攣
IRISステージ分類
猫の腎不全では国際獣医腎臓病研究グループ（IRIS）が慢性腎臓病ガイドラインの中で、慢性腎臓病をステージ別に分類しています。
軽度の腎不全であるステージ1から重度のステージ4までのそれぞれの症状を解説していきます。
Stage.1
腎機能の低下はあるもののほとんど症状は見られません。たまたま健康診断で見つかるケースがある程度です。
Stage.2
水を飲む量やおしっこの量が増える猫もいますが症状が見られない子もいます。血液検査では数値が正常～やや高めの状態です。
Stage.3およびStage.4
Stage.3では食欲不振や嘔吐、貧血などの症状が現れます。Stage.4は末期の状態で腎臓はほぼ機能しておらず、尿は少ししか出ていないか無尿です。集中的な治療が必要な状態です。
慢性腎不全の余命
慢性腎不全の余命は症状や治療方法によって異なります。
海外の研究結果によると、ステージ別の生存期間の平均は
ステージ2：1151日（約3年）
ステージ3：778日（約2年）
ステージ4：103日（約3か月）
であったと報告されています。
ステージ4になると極端に寿命が短くなることが分かります。ステージ2や3でも年単位での余命です。
しかしきちんと治療を続けていけば余命を伸ばすことは可能です。特に初期のステージ2では腎機能が残っているため、獣医師から処方される内服薬やサプリメント、療法食をしっかりと続けましょう。
腎臓の機能を失わないようにすることが重要です。
慢性腎不全にかかりやすい猫
慢性腎不全にかかりやすいのは
です。
・10歳以上の猫の10%前後
・15歳以上の猫の30％以上
が罹患しているとの報告があります。
また猫種だと
・ペルシャ
・アビシニアン
・ヒマラヤン
・メインクーン
・ロシアンブルー
・バーマン
などがかかりやすいといわれています。
これらの猫種は血縁の中に腎疾患があると遺伝しやすいとされる「家族性腎症」から慢性腎臓病に移行するといった報告があります。
しかし猫種に関係なく高齢猫は注意すべき疾患だといえるでしょう。
病気が発症した猫にしてあげられること
愛猫が腎臓病を発症した時に、私たち飼い主には何ができるのでしょうか。
大切なことは
です。
通院の継続
慢性腎臓病では吐き気や食欲不振を伴います。これらの症状で生活の質が落ちないようにきちんと通院して、症状の緩和や腎不全の進行を防ぐ治療を行いましょう。
吐き気止めや食欲が出る投薬、腎不全の進行を遅くするための療法食など、愛猫がいつも通りに生活できるよう獣医師と相談しながら治療をしていくことが重要です。
在宅でのターミナルケア
ターミナルケアとは終末期の医療および看護のことで、
です。
腎臓病末期になると寝たきりになり、ターミナルケアが必要になることがあります。
自宅でのケアでは
・定期的に寝返りを取らせて床ずれを防ぐ
・食事や給水の補助
・体の清潔を保つ
などを行います。
ターミナルケアを行う場合でも獣医師との連携は重要です。脱水のケアや栄養状態など、愛猫の生活の質を維持するための処置が必要なことがあります。
ターミナルケアでは愛猫との最後をどう迎えるか、飼い主さんにとっても大切な時間です。
猫にとっても飼い主さんにとっても、幸せな最後を迎えることができるようなケアを行ってください。
動物病院でおこなう検査と治療
慢性腎臓病と診断して治療を行うために、まずは検査を行います。
腎臓病には
・ほかの原因から腎臓が悪くなってしまったケース
があります。
例えば結石が原因で慢性腎臓病になったのであれば、結石の除去を行わなければいけません。その後も結石ができにくい食餌を処方するなど治療方法が変わります。
慢性腎不全の検査
慢性腎不全では検査項目によってステージング分けされます。
検査内容は主に
・尿検査
・画像検査（X線検査や超音波検査）
が行われます。
血液検査
血液検査では主に
・クレアチニン
・BUN（血中尿素窒素）
・P（リン）
・SDMA
の値を確認します。
近年ではSDMAという腎機能マーカーが広く普及しており、クレアチニンと比較してより初期の腎疾患を見つけ出すことができる利点があります。
【クレアチニン】
筋肉を動かすためのエネルギーを使った後に出る老廃物の一種。腎機能の悪化で血中クレアチン値は上昇する。
【BUN（血中尿素窒素）】
タンパクの分解産物で腎臓から捨てられる毒素。腎臓以外の疾患や食後でも数値が上昇するため、ほかの検査を含めた評価が必要。
【P（リン）】
リンも腎臓から尿へ捨てられるものなため、腎臓が悪くなるとリンの濃度が上昇する。
【SDMA】
たんぱく質を分解する過程で血液中に放出される物質。腎臓のフィルターとしての機能が低下してくると血液中にSDMAが存在するようになる。
尿検査
尿検査では
・尿比重
・尿タンパク
・尿沈査
を調べます。
【尿比重】
尿の濃度が分かる。腎臓病だと再吸収して尿を濃縮する機能が低下するため、尿の濃度は薄くなる。
【尿タンパク】
タンパク質は体に必要な栄養素なため、健康な尿にはタンパクは含まれない。腎臓病になるとろ過機能の低下によりタンパク尿がみられる。
【尿沈査】
結晶や細菌の有無が分かる。
画像検査（X線検査や超音波検査）
腎臓の状態を視覚的に診ることができます。
【レントゲン】
腎臓の肥大や収縮、結石の有無が分かる。
【超音波検査】
見たい部分をさらに詳しく、断面図で診ることができる。
獣医師がおこなう治療
腎臓は一度失った機能を取り戻すのは難しく、治療の目的は症状の進行を抑えることになります。
治療方法は対症療法となり、症状によっては
・脱水症状改善の点滴
・輸血
などが行われるケースもあります。
重い症状もなく一般的な治療としては
・投薬
があげられます。
食餌療法
食餌療法は腎臓病の進行を抑えるために大切な方法です。
と言われています。
獣医師の処方の元、ほかのフードを与えず療法食だけに切り替える必要があります。
腎臓用の療法食は食いつきが悪いと悩む飼い主さんが多くいますが、現在ではウェットフードの療法食もあり嗜好性を高めています。
いろいろと試してみて愛猫が食べてくれる療法食を選びましょう。
投薬
病気の症状によっては薬を処方される場合があります。
現在では「ラプロスⓇ」という腎臓病の治療薬が発売され、病気の進行を遅らせる効果が期待されています。
他にも、老廃物や毒素をうんちと一緒に排出させる活性炭や、高血圧や貧血などの症状を軽減する薬が処方されることもあります。
猫の腎臓病の予防と早期発見、早期治療
猫の慢性腎臓病はゆっくりと腎臓の機能が低下し、徐々に症状が現れます。早期治療で寿命を延ばすことが可能なため、普段から愛猫の給水量やおしっこの量を把握しておきましょう。
特に中高齢の猫は発症のリスクが上がることから
をおすすめします。血液検査を行うことは早期発見に役立ちます。
また慢性腎臓病は膀胱炎や結石などほかの疾患から引き起こされる場合があります。
常にきれいなトイレと水でおしっこや給水を我慢させない環境を作ることで、泌尿器のトラブルから腎臓を守りましょう。
予防や早期発見に！毎年受けられる「腸内フローラ測定」
アニコム損保：腸内フローラの結果表示のサンプルページ
アニコム損保に加入すると「腸内フローラ測定」が毎年無料で受けられます。有料でも検査キットを販売していますが、8,800円(税込)かかります。
ペットの腸内を検査し、腸内に存在する菌の状態や環境を測定することで健康状態の確認ができるという優れものです。
犬の場合は「アレルギー体質チェック」、猫の場合は「腎臓チェック」等ができます。特に猫の場合は腎不全の予防に備えることができます。
そして、こちらの腸内フローラ測定の検査結果が悪かった場合、アニコム損保指定の動物病院で、無料の健康診断（血液検査）を受けることができます。
アニコム損保は入ると健康になる「予防型保険」を目指しており、この点が多くのペット保険と違う点です。
全てのペット保険では「予防目的の検査や健康診断」は補償の対象外としています。「腸内フローラ測定」や「無料の健康診断」等の予防型サービスもアニコム損保以外のペット保険会社ではありません。
いざという時の備えであるペット保険ですが、一番いいのは何も起こらず健康でいることに違いありません。ペットの健康を本当に考えたペット保険がアニコム損保です。
※腸内フローラ測定は「どうぶつ健保ふぁみりぃ」「どうぶつ健保しにあ」のみになります。
猫の腎不全はペット保険で補償されるか？
ほとんどのペット保険で、加入後に発症した猫の腎不全に関しては補償の対象となります。ただし、必ず重要事項説明書や保険約款・公式HPで猫の腎不全が補償されるか確認することをおすすめします。
また、上述した通り猫の腎不全は基本的に完治させることが難しい病気で、一生の付き合いが必要とされます。したがって長期の治療が必要です。
ペット保険は基本的に１年の保険期間の契約となり、自動的に更新していく形となります。つまり、毎年契約を更新できるか審査があります。
そのため、猫の腎不全のような完治が難しい病気は「次年度の契約（更新）から補償の対象外とします」といった条件を付けられてしまうこともあります。
中には公式HP内でも「更新時に条件を付けることはありません。」といった記載をしているペット保険がありますので、一度確認してみることをおすすめします。
また、猫の腎不全は基本的には通院での治療になりますが、尿結石や腫瘍などを併発すると手術だけで10～30万円ほどの治療費用がかかります。
そのため、通院・手術・入院を補償するフルカバー型のペット保険の中でも通院補償に手厚いプランの加入をおすすめします。
猫の腎不全におすすめのペット保険は？
最後に、今回ペット保険比較アドバイザーでは猫の腎不全におすすめのペット保険を紹介します。
おすすめの理由としては
・通院、手術、入院を補償するフルカバー型のペット保険の中でも通院補償に手厚い
・付帯サービスで腎不全の早期発見、治療に役立つ簡易的な健康診断が自宅でできる
また付帯サービスで「腸内フローラ測定」を年一無料で行えるため、猫の死因ランキング1位である腎不全の予防・早期発見できる他、外出しずらい猫には有効な健康チェックでき、測定結果によっては血液検査も無料で受けることができます。
アニコム損保は入ると健康になる「予防型保険」を目指しており、この点が多くのペット保険と違う点で、そもそも病気にさせたくないと考える飼い主様にはアニコムがおすすめです。
「ふぁみりい」は7歳11か月までの猫さんしか加入できませんが、「しにあ」では７歳以上であれば全ての猫さんが加入でき、「しにあ」でも腸内フローラ測定が年一回無料で受けられます。
| メリット | デメリット | |
 | ・歯科治療も補償 ・「腸内フローラ測定」等の予防型サービスも付帯 ・通院は一日当たり14,000円×年20日まで補償（補償割合70％プラン） | 保険料が高い 保険金請求回数に応じた保険料割増制度あり |
2年目以降のご契約継続について弊社の商品の保険期間は1年間ですが、ご契約には「継続契約特約」を適用して引受をさせていただいておりますので、解約等のお申し出がない限り満期後は、原則ご契約は自動的に継続となり、終身ご継続いただけます。
※ご注意
・ご契約者または弊社より別段の意思表示があった場合には、ご契約は継続となりません。
・自動的にご契約が継続とならない場合や、商品改定により保険料、補償内容などが変更となる場合があります。
引用：重要事項説明書
よくある質問
猫が慢性腎臓病にかかると余命は短いですか？
最近では腎臓の機能低下を遅らせる効果が期待できる薬もあります。あきらめずに治療を続けることが重要です。
慢性腎臓病にかかりやすいのはどんな猫ですか？
特に中高齢猫は発症のリスクが上がるため、定期的な健康診断をおすすめします。
ペット保険は必要？
ペットには公的な保険制度がありません。そのため治療費の自己負担額は100％です。
もしもの時に、お金を気にせずペットの治療に専念できるよう健康なうちにペット保険に加入することをおすすめします。
ペット保険比較表や記事を活用するのがおすすめ！
ペット保険比較アドバイザーでは、ペットに合った保険の選び方やペットの健康に関するお役立ち記事を公開しております。
記事と合わせて比較表も活用することで、ペットと飼い主様に合った保険を選ぶことができます。
また、保険会社のデメリット等も理解できるので、後悔しないペット保険選びができます。
ペット保険への加入を検討されている方はぜひご活用ください。
【猫の慢性腎臓病は余命が短い？末期症状や寿命の伸ばし方とは？】まとめ
今回、ペット保険比較アドバイザーでは
・猫の慢性腎不全の治療方法
猫の慢性腎不全は発症すると余命が短いといわれる疾患です。
